2019年10月28日

舞台芸術部門 コンドルズ×豊島区民 Bridges to Babylon -ブリッジズ・トゥ・バビロン-



NHK総合『サラリーマンNEO』内「テレビサラリーマン体操」や、NHK大河ドラマ『いだてん』の天狗倶楽部などの振付などで知られる人気ダンスカンパニー、コンドルズ。2008年、あうるすぽっとプロデュースで彼らが創りあげた『にゅ〜盆踊り』は、今や池袋の夏の風物詩となっています。そして今年11月、コンドルズと豊島区民が共に創る新作ダンス公演『Bridges to Babylon -ブリッジズ・トゥ・バビロン-』が上演されます。舞台芸術部門の事業ディレクターをつとめ、さらにご自身も豊島区民であるコンドルズ主宰の近藤良平さんに、豊島区とのつながりや新作ダンス公演への展望を伺いました。


——近藤さんは豊島区在住だそうですが、いつ頃から住まわれていたのでしょうか?

近藤良平(以下、近藤) 12年前くらいかな? 僕のかみさんが鍼灸師で、それまでは新宿区で家だったり診療所や駐車場を借りていたんだけど、ものすごくお金がかかるようになってしまって。とにかく自宅が欲しくて、駅からあまり遠くない場所で物件を探していたところ、西池袋に不思議な一軒家を見つけて、それを買うことにしたんです。

そんな経緯があって豊島区民になったんだけど、賃貸の物件ではないから近所づきあいが濃くなるんだよね。当時子どもが3歳くらいだったこともあって、暮らしがより地域に入っていくし。それで豊島区、特に西池袋近辺が身近な存在になったし、2007年には東池袋にあうるすぽっとができて『にゅ〜盆踊り』を通じてつながりも生まれて…こんなに豊島区となじむとは当初思っていなかったので、僕としては不思議ですね。

——住み始めた頃と比べて、豊島区という街へのイメージは変わりましたか?

近藤 変わった! 2011年に西池袋通りが開通してからは、ものすごく変わった。電柱を地中に埋めて、街路樹を生やす計画道路というのもあるけど、犬の散歩をしていると那須高原とかあらゆるところへと向かう観光バスが通ったりするんだよね。観光バスってウキウキした気分で乗るものだから、なんか夢があるじゃない?(笑) 僕にとっては、素敵な道です。

——先ほど話の中に出た『にゅ〜盆踊り』ですが、あうるすぽっとが2007年にオープンしたのをきっかけに誕生したんですよね?

近藤 そうです。あうるすぽっとがオープンした翌年に「ダンバリ」ワークショップという企画が4本あって、そのひとつとして創りました。思いつきで盆踊りという形にしましたが、当時のあうるすぽっとのチーフプロデューサーと話し合う中で盆踊りという形に固まったと言っても過言ではなくて。今でもよく覚えているんだけど「毎年続いていくとか、お客さんがこの場所にまた帰ってくるとか、一過性で終わらないものを残せたらいいね」ということを話していました。続くかどうかは分からないけれど、そうやって人が毎年集まれる場所があるといいなっていう想いや希望が僕にもありました。

あと数年前から「いろんな踊りを地元の人であろうが、海外の人であろうが、一緒に時間を共にできること自体が『にゅ〜盆踊り』なんだな」と思うようになって、すごく楽になったんですよ。『にゅ〜盆踊り』はひとつの踊りではあるんだけど、あの踊りだけを絶対にやらないといけないとなると、ちょっと窮屈なんですよね。いろんな踊りを、みんなで分かち合いたいという想いもあるので、例えば中国や韓国の踊りを時々『にゅ〜盆踊り』には入れ込んでいたりもしていて。そういう意味では海外の方も参加しやすいんじゃないかな? 手招きして踊りに誘う振り付けもあるからね。

——これまで各地に公演やワークショップなどで行かれていますが、他の地域と比べたときに感じる”豊島区民らしさ”は何かあったりしますか?

近藤 面白いのはね、『にゅ〜盆踊り』への参加率が高いこと! あと、これまで踊りをマスターして一緒に『にゅ〜盆踊り』を盛り上げる「しゃ〜隊」として参加してくれた人や、50歳くらいで『にゅ〜盆踊り』に参加して、今60歳くらいになった人が、今度は11月に東京建物Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)のこけら落とし演目として公演する『Bridges to Babylon -ブリッジズ・トゥ・バビロン-(以下、B2B)』に参加していたりもするんですよ。親子で参加している方もけっこういるみたいなんだけど、こんな話あまり聞かないでしょ?(笑) そういう広い気持ちを持っているというか、広く楽しもうと思っている人が豊島区民には多いと思うね。

——近藤さん率いるコンドルズと、区民を中心とした参加者で創りあげる『B2B』ですが、180名もの方々が参加されると聞きました。

近藤 そう、180人を90人ずつの2チームに分ける予定です。最初は20〜30人を2チームくらいの規模で考えていたんですが、区民からの応募がものすごくあって。もし僕が「こういう作品じゃなきゃいけない」という作品づくりをするタイプの人間だったら30人2チームに絞っていたかもしれない。でも180人を3人とかに絞るならまだしも、せっかく集まった人を絞ってしまうなんて意味が分からないなと思ったので「もう90人の2チームでいいんじゃない?」って(笑)。どうなるか予想がつかないけど、そっちの方が面白いかな、と。

——これだけの人数が出演する公演は初めてなのでは?

近藤 どうなんだろう? 『東京スポーツ国体 2013』の開会式式典演技の総演出をしたときは2500人くらいに振付をしたけど、そういうのとはまた違うからなぁ…。でも、これだけの人数がいると人間関係が生まれて面白いんですよ。高校生くらいの子は自分のことでいっぱいだから何も手伝わないけど、30歳くらいの人は若い子の面倒をみはじめたり、元気の良いおじいちゃんやおばあちゃんが中にいると、みんな「すげぇ!」ってなったり(笑)。あと単純に90人が客席に向かってウワーッと一生懸命に踊ったら、もうそれだけでパワーがある。大人って意外と体が大きくて、いっぱいいると存在感というか重量感が出るから、90人の塊がドドドッと舞台の上を移動するだけでも面白いんですよ。

これからワークショップを行うので、まだなんとも言えないところがあるけど(※取材は9月初旬)、短い時間の中でとはいえ区民の皆さんと交流して公演すること自体も面白いと思いますね。作品としてはコンドルズ的な要素もガンガン出るだろうけど、僕としては区民の皆さんを前座扱いしようとは考えていなくて。「前座が終わりました、さぁコンドルズの出番です!」っていうことだけにはならないように、90人の区民とコンドルズが一緒にやっている感じを強く出したいと思っていますね。

——区民の方たちもコンドルズ的なコントをするかもしれない?

近藤 90人で「わっしょい!」って言うかもしれないね、それもセリフだから(笑)。何にせよ東京建物Brillia HALLのこけら落とし演目であり、東アジア文化都市2019豊島のクロージング演目という祭典でもあるので、あまりナーバスな空気は持ち込みたくないなと考えていて。ちょっとしたミスがあったとしても、祭典らしさの中ではどうでも良いことだと思うし。ラフな感じというのもまた違うけど、重苦しい雰囲気ではなく、わくわくするような気持ちの中で区民の皆さんには参加してもらえたらうれしいですね。

——『B2B』のチラシの撮影は東京建物Brillia HALLで行われたそうですが、実際に劇場を見てどんな印象を抱かれましたか?

近藤 いろいろな噂を周りから聞いていたけど、僕はいいなと思いましたね。客席の造りかたが上手なのか舞台と近く感じたし、入り口の赤い感じがけっこういいんですよ。入ったときに「こんないい雰囲気、よく作れたな」と思ったし、良い意味で演劇のメッカになりそうだなって。でもこれであのエリアに劇場が8つできることになるから、これから頑張らないと大変だよ。

——舞台にたずさわる方々にとって、街に劇場が増えるというのは単純に喜ばしいことなのでしょうか?

近藤 僕は劇場文化のところで生きている部分が強いから「そんなボロ泣きしてないで、劇場に行こうよ」って言えるような感じで、ひょいと行ける場所に劇場があるというのは理想だし、実際にあって欲しい。ただ「もう一度、ここに来たいよね」と思える場所になるよう、少なくとも関係者は努力しないとダメだと思っている。あと僕としてはいろんな人に来て欲しいかな、同じ人ばかりが来てもしょうがないし。これからの1年間が劇場としては勝負どころだろうし、「もう一度来たい」と思ってもらえる場所になるよう、僕らもこけら落とし演目となる『B2B』は情熱をかけてやりたいなと考えています。


文・林みき