2019年7月5日

Oeshiki Project Session #1 レポート



4月12日に「Oeshiki Project Session」第一回が巣鴨のRYOZAN PARK Loungeで行われました。上海からシャオクゥ × ツゥハンのおふたりも来日し、《Oeshiki Project》のクリエーションチームが初集結しました。


《Oeshiki Project》とは何か?

まず、ディレクターの石神夏希さんから、御会式についての説明を。
「御会式を知らない人いますか?」という問いかけに対し、ちらほらと手があがります。意外と豊島区に住んでいても御会式を知らない人もいるようです。

御会式とは日蓮宗の法会として関東を中心に多くのお寺で行われています。雑司が谷で行われる「鬼子母神 御会式」は東京の三大御会式の一つにも数えられています。

池袋から徒歩10分という都心ながら、国道を交通規制し、最大数千人もの人が太鼓と万灯と共に練り歩く盛大な行事です。
雑司が谷の御会式の特徴は、檀家以外の地域住民の方々が8割を占めており、たとえ日蓮宗の信徒ではなくとも参加できる、多くの方に開かれた行事であることです。
《Oeshiki Project》は、この御会式の当日に、日中合同の音楽家とパフォーマーのチームで、まちの中を舞台にパフォーマンス作品を上演します。

日中合同のクリエーションチームを紹介

そんな《Oeshiki Project》のクリエーションチームより一人ずつ、これまでのそれぞれの活動と、《Oeshiki Project》にどのようにかかわっていくかを話しました。

まずは、本プロジェクトディレクターの石神夏希さんから。
劇作家として、特にここ数年は劇場ではなくまちを舞台にした演劇やアートプロジェクトを、各地に滞在しながら作っています。

例として紹介したのは、横浜の本牧、メルボルン、マニラで行った、まちの住民たちで秘密結社をつくるというプロジェクト『ギブ・ミー・チョコレート!』。まちの中でチョコレートを集めながら、包み紙に書かれた司令をもとに結社のメンバーを探し出す行為を通じて、さまざまな人びとの暮らしに出会う仕掛けです。

都市の調査やまちづくりの仕事に関わることも多く、五感の体験で各都市の幸福度や満足度を調べる『官能都市』(LIFULL HOME’S総研)など、演劇の視点から社会やコミュニティが「どのように振る舞うか」に関心を持ち、活動を行っています。

次は豊島区在住の嶋田洋平さん。建築家として、新たに建てるだけではなく、使われていない建物をどう使うかを考える「リノベーションまちづくり」に取り組むほか、雑司が谷エリアで「神田川ベーカリー」というパン屋を経営しています。

嶋田さんは2014年に豊島区が消滅可能性都市に選ばれたことに触れ、豊島区が消滅することはないが、本当の課題は「ずっと住み続けるのが難しいまちであること」ではないかと話しました。豊島区人口増加についても調べたところ、20代30代が爆発的に増えているが、その内訳を見ると外国人の増加に拠るところが多いとわかったそうです。

《Oeshiki Project》を通して、どうしたら海外からやってきた人たちがこのまちに住み続けて幸せになれるか、住み続けられるかをテーマに活動を行いたいと語りました。

ドラマトゥルクとして参加される安東嵩史さん。編集者として、アートブックを中心に手がける一方、移民をテーマとしたリサーチャーとして活動しています。特に、日本を出て行って海外で暮らしている人たちの一世、二世について、彼らのアイデンティティや文化について調べています。

例として「世界ウチナンチュー大会」という、世界各地で暮らす沖縄にルーツを持つ人々が数年に一度集うお祭りを挙げ、《Oeshiki Project》では自分が何者なのかを常に考えながら、豊島区に現在住んでいる海外の人たちが、江戸時代から続いている御会式と結びつく点がどこにあるのかをリサーチしていきたいと話しました。

今回はリサーチのため、上海から来日したアーティストのシャオクゥさんと、ツゥハンさん。
公私共にパートナーであるふたりは8年間の協働を経て、中華系移民をテーマとした新しいプロジェクト『CHINAME』をスタート。
世界中に散らばる中華系の人びとのアイデンティティを探り、それを通して国家や国籍とは何かを問う、意欲的なプロジェクトです。

ふたりは前日に来日したばかりでしたが、滞在している北池袋エリアには”目にはみえない中華街”がそこに存在していることを知り、横浜中華街は中国の南方出身の人が多いが、豊島区には中国東北地方の方が多く、中国が発展してきた背景や現代の状況を反映していると感じたそうです。今回は、中国からの移民の歴史について掘り下げるのではなく、現在豊島区に住んでいる人たちの地域に根ざしたコミュニティに重点を置いてリサーチを行う予定です。

音楽プロデューサーの清宮陵一さんは、中学時代の3年間、巣鴨に住んでいたそうです。「青春の思い出でつながっている」という豊島区での本プロジェクトへの抱負を語りました。

清宮さんは、アートプロジェクトをつくる上で、様々な形でたくさんの人々が音楽に関わることができるスペースを用意することを大切にしているそうです。

また、シャオクゥさんとツゥハンさんのお二人のお話の中でも触れられたアイデンティティについて、日本人のアイデンティティを《Oeshiki Project》でどう出していくか、御会式の伝統的な太鼓のリズムと様々なアイデンティティがどのように繋がったり溶け合ったりしていくかを見ていきたいと話しました。

シャオクゥさんとツゥハンさんと共にリサーチを進める井上知子さんは、イギリスやドイツで演劇の勉強をした俳優です。海外では移民として生活していたため、東京で暮らしていても「日本人」としてより「移民」というアイデンティティを意識しているそうで、「今回のリサーチをとても楽しみにしています」と話しました。

地域の人たちがつくる御会式

最後に、会場に来てくださっていた御会式連合会会長・川井誠さんからご挨拶を頂きました。

御会式連合会は、雑司が谷の地域にある「鬼子母神 御会式」の21講社が集まり立ち上げた会です。御会式を無事に、かつ、講社として参加する自分たちも、沿道から見ている人たちも安全に楽しく行うにはどうすればいいかを考え、一年間かけて準備をされています。

《Oeshiki Project》は昨年の御会式から、当日はもちろん、準備や毎月の会合に参加させていただき、リサーチと話し合いを進めてきました。10月の本番に向け、連合会の皆さんにも力を貸していただきます。

このプロジェクトでは作品を制作・上演するまでのプロセスもプロジェクトの一部として公開しています。具体的には、定期的にトークやワークショップといった関連イベントを開催する他、WEBマガジン「コロカル」への記事連載などを通して、制作過程で生まれるさまざまな発見や出会いの場を共有するのが狙いです。最終的に10月の御会式の本番にツアーパフォーマンス《BEAT》を上演します。

文化が違うから、ビートも違う

《BEAT》というタイトルの由来は、御会式の練行列で叩かれる太鼓。あるお坊さんが「日蓮宗の読経はビートが速いんです」と表現していたことが印象的だった、と石神さん。

すると清宮さんから、「ビートが合わない」ということも文化の違いから起こるのではないのか、そこにむしろ面白さが生まれることがあるのでは、との指摘が。例として、清宮さんが過去に行った、日本と韓国とブラジルの太鼓と踊りのチームがそれぞれ離れた場所から動き出し、集結していくというプログラムを紹介。それぞれのビートがズレたまま進んでいたものが、ある瞬間にすべてのビートが融合し、全く異なるもの同士が重なり合う様を見た時に心底すごい!と感じた、という経験を話してくれました。

安東さんは、ブラジルにある、治安が悪くスリや窃盗が多発するまちでの事例を紹介しました。

地域にあるパーカッションのチームが、不良行為を行う人々も巻き込んだ大きなカンパニーを築いてコミュニティ化しており、若者たちの居場所として、風紀や治安の向上につながっているそうです。このケースでは、ひとつの大きなアンサンブルの中で、思い思いに演奏していることが成功しているポイントだとか。

無理に合わせるのではなく、偶然重なったビートのように、その人それぞれの個性を殺すことなく、いろいろなバックグラウンドの人が多様性を抱えたまま集まることを、都市空間のなかでもう一度考え直したい、と話しました。

嶋田さんは雑司が谷に引越してきた最初の年に御会式を見て、「身の危険を感じる」ほどの迫力に圧倒されたそうです。来年は参加しようと決め、マンションの大家さんにどうすれば参加できるのかと相談したところ、「出ていいよ」と即答され、とてもびっくりしたそう。

「ザ・ローカル」な濃密なつながりがありつつ窮屈ではない、ゆるく繋がっている感じ。雑司が谷の御会式が持つこのような寛容さは、これからのまちづくりにおいて、とても重要だと感じているそうです。

中国の「公共」の現在

シャオクゥさんとツゥハンさんは、中国の「公共」について話してくれました。
中国の公園など公共の場では、夕食後の19時頃になると、年配の方々を中心にジャンルやコミュニティごとに分かれて踊り始めるグループが見られるそうです。清宮さんのビートの話のように、各々が異なる音楽で踊っていても、一緒に踊っているように見える瞬間があるそうです。

ところがある地方では、公共の場での騒音対策のため、政府がサイレントディスコ(スピーカーではなく、個々人がヘッドフォンで音楽を聞きながら一斉に踊るスタイル)を推進しているとか。傍から見ると、音が聞こえてないのに大勢の人が踊っている様子は、想像するだけで不思議です。

また、ここ数年での経済発展と、それに伴う社会の変化のため、中国では伝統的なお祭りの日に公に何かを行うということは少なくなっているようです。買い物に行く方がほとんどで、春節時の風物詩だった爆竹や花火も、現在はなかなか見ることがないそうです。そこでシャオクゥさんはインターネット上に伝統的な花火を上げて、勝手にお祝いしているそうです。

ここで、清宮さんの提案で、御会式で使う「団扇太鼓」をシャオクゥさん、ツゥハンさんに叩いてみてもらうことに。ふたりにとって見るのも触るのも初めての太鼓。少し戸惑いながらも、バチで太鼓の皮の表面をなぞったり、縁を叩いたりと個性的な即興演奏を聴かせてくれました。

そして最後には、連合会会長の川井さんが実際の御会式の叩き方を実演してみせてくれることに! 力強い太鼓の響きに、会場全体がビリビリとしびれた瞬間でした。

「Oeshiki Project Session #1」は和やかに、と同時に太鼓のビートに貫かれた一体感とパワーを感じながら終了しました。
10月の本番前まで、豊島区各所で引き続きワークショップやトークイベントが開催される予定です。

|関連イベント|
Oeshiki Project
〈日程〉2019年10月16日(水)〜18日(金)
〈会場〉あうるすぽっと、豊島区内各所
詳しくはこちら〈Oeshiki Project〉から